« 米屋自遊人、本日の営業時間のお知らせ | トップページ | 西日本の有機・無農薬野菜セット 11月4日発送の野菜 »

放射性物質検出のお知らせ

今日は残念なお知らせをしなくてはなりません。

新潟県魚沼産のコシヒカリから微量の放射性セシウムが検出されました。

検出された量は1㎏あたり1ベクレル前後というごく微量ではあるのですが、現在、新潟県をはじめとした行政機関、JAや米卸、小売店ともに「放射性物質は不検出」ということになっていますから、この公表には勇気がいりました。

他の機関で「不検出」なのには理由があります。それは検出下限を10ベクレル~20ベクレルに設定しているから。今回、当社の検査で検出された数値はわず か1ベクレル前後ですから、検査機関に検出下限値を10ベクレルに設定するよう依頼すれば「不検出」という結果が出てきます。

しかし当社ではセイフティーポリシーでお伝えしているとおり、知りうるすべての情報を皆さまにお伝えすることが食品を扱う者の使命と考えています。 10~20ベクレルという検出下限値を意図的に設定して、すべて「不検出ですよ」と安心感を強要するより、本当の検出限界まで計測して不検出なのか否かを お伝えしたほうがいいと思ったのです。

当社では、今回公表したゲルマニウム半導体検出器による検査(政府が公式に採用している検査器と同様。国内でも検査できる機関が限られています)のほかに、シンチレーション検出器による測定をすべての食品で行っています。
検査の順序は、まずシンチレーション検出器での放射性物質測定を行います。そしてあきらかに異常値を示しているものと、異常値ではないが通常値を微妙に上回る「グレー」なものについては、外部機関によるゲルマニウム半導体検出器での本検査を行っています。

平行して当社では土壌汚染の状況を独自調査しておりますが、その調査において「土壌汚染が深刻な可能性がある」と判断した地域の農産物に関しても、すべてゲルマニウム半導体検出器での本検査を行っております。
(※当社直営の「膳」と自遊人オリジナル商品が検査対象です。また検査対象は原発事故以降に収穫された、または製造された農産物、海産物、加工品です)

魚沼地域に関しては、原発事故後のかなり早い段階で「土壌汚染が深刻な可能性がある」と当社では判断しており、収穫まで慎重にデータを集めてまいりまし た。隣接する群馬や福島の一部地域などと比べれば汚染度合いは少ないとはいえ、新潟県内では汚染度合いが高い地域であることは間違いなく、さらに魚沼地域 のなかでも当社の圃場がある魚野川流域の汚染度合いがとくに高いことがわかってきました。(魚沼産コシヒカリの中でもとくに美味しいお米ができると言われ ている地域です)

やがて、各地から放射性物質の検査結果が入ってきました。想定していたよりも放射性セシウムの土壌から稲への移行係数は小さく、土壌は汚染されていてもお 米から放射性物質が検出されないという、奇跡的な結果が続出したのです。当社の全員が「ほっと胸をなでおろした」瞬間です。

当社でも魚沼地域と隣接一部地域で生産されるすべてのお米(当社で販売するお米)をゲルマニウム半導体検出器による検査に出していましたが、すべて1ベク レル未満の検出限界まで「不検出」という結果が出ていました。以前、ブログに書いたように「逆にこれほどまでに検出されないと、むしろ土壌から稲への放射 性セシウムの移行係数を0.1と農水省が設定していたことに、なにかしらの意図を感じる」と思っていたほどです。

しかし、さすがにすべてのお米から「不検出」というわけにはいきませんでした。

最初に検出された数値はセシウム134が0.99ベクレル/kg、セシウム137が1.5ベクレル/kgという結果でした(別紙の検査結果をご参照ください)。
正直言って「ごく微量」です。日本政府の暫定基準値である500ベクレルをはるかに下回っているのはもちろん、ウクライナやEUの基準値も下回っています。「不検出」と言ってしまってもいいほど微量な数値です。

当然ながら社内でも一悶着ありました。
「各県が10~20ベクレルを検出下限値にしているのだから、それ以下で検出されたことを公表すると多方面から圧力がかかる恐れがある」
「50ベクレルを検出下限にしている会社もあるのだから、10ベクレルでも十分厳しい基準。10ベクレルを検出下限にすれば“不検出”と表示されるのだからそれでいいのでは?」
「県や他社はさておき、仮に発表すると、単純な話として魚沼地域にいられなくなる可能性がある」
とはいっても、セイフティーポリシーはすでにウェブに掲げてあります。検出下限も1ベクレルに設定することにしています。公表しないわけにはいきません。
(※1ベクレル以下の検出下限に関しては検査時の状況により前後するので、セイフティーポリシー上では検出下限を1ベクレルとしていました)

ただし、公表するにしても私たちには確認しておきたいことがありました。それは「どうして放射性物質が検出されたのか」ということ。そしてその理由は果たして次のうちのどれなのかということです。
1・検査をした圃場の周辺が魚沼地域のなかでもホットスポットだった。
2・他のお米からも本当は検出されておかしくないが、たまたま検出されなかった。
3・それ以外の特殊な条件が重なって、この生産者のお米からだけ検出された。

消費者の皆さんは1か2を当然疑うでしょうが、2ではないことは明らかでした。なぜなら、魚沼地域で生産される他の検体からは、本当に放射性物質がまった く検出されません。そして1についても疑問符がつきます。なぜなら、放射性セシウムが検出された地域より土壌汚染が深刻と思われる地域のお米から、やはり まったく検出されないのです。
そして私たちはひとつの仮説にたどりつきました。それは「農法」です。

稲がある程度育った7月下旬、水田から水を抜いて土の表面が軽くひび割れるくらいまで乾かすことを「中干し」と言います。これには稲の根の張りをよくする 効果があります。水分を求めて深く根を張るため、結果的には秋の倒伏を避ける効果があるのです。コシヒカリは背が高く倒伏しやすいため、最近では「中干 し」が必須とされ、魚沼でもほぼすべての生産者が「中干し」を行います。

実はこの生産者は「中干し」をしていませんでした。「していない」というと悪いことのようですが、食味を追求するなら中干しをしないほうが良いという意見も多いのです。
もともと稲は水田で育つものですから成長期に水を抜くなんてもってのほか、というわかりやすく理にかなった農法です。しかしその分、根の張りは浅くなりま す。放射性セシウムは土壌表面近くの濃度が高かったと推測されますから、より多くの放射性セシウムを吸い上げることになってしまいます。

しかも今年の7月下旬には大雨がありました。魚沼地域は各地で土砂崩れが起きるほどの大雨でしたが、大雨は山の表土にたまっていた放射性物質をかなり流し ました。私たちの会社の敷地も大雨による被害にあいましたが、その前後ではガイガーカウンターの数値に大きな変化があったほどです。その水が田んぼに流れ 込んだのです。しかもそのあとに中干しをしていません。

私たちは「中干し」の有無が原因である可能性が高いと考えて、同一圃場の土を再検査に出すのではなく、異なる圃場の合計3箇所の土をゲルマニウム半導体検 出器による検査に出しました。3箇所はけっこうな距離があります。そして他の生産者の検査で「不検出」と出ている圃場から近い圃場を選びました。
結果、すべての圃場から微量の放射性セシウムが検出されたのです。

中干しの有無が原因なのか、それは私たちには断定できませんが、現状としては私たちの仮説が当たっている可能性が高いといえます。この先の検証に関しては費用も多額になりますし、私たちの範疇ではないため、いずれ行政が解明してくれることを祈っています。

さて、いずれにしても放射性物質は検出されてしまいました。この先、「食品会社としてどうするのか」ということなのですが、私たちは、この件をセイフ ティーポリシーにのっとって皆さまに公表するのと同時に、この生産者のお米をお申し込みいただいていた方々に、ひとりずつお電話で状況をご説明することに しました(すでにお電話を始めています)。
検出された放射性セシウムはきわめて微量です。お米自体の味は抜群ですし、「少しくらいの放射性物質なら気にしないわよ」という方がいらっしゃるのも事実 です。もちろん、気になる方は遠慮なく他のお米に変更していただきたいと思います。私だって突然同じことを聞かれたら悩んでしまいますから。

ただし、このお米を申し込んでいない方に生産者の名前と地域を公表することは差し控えたいと思います。今回、生産者にもこの件について公表することを了承 していただいていますが、個人名が公になることは好ましくないと思っていますし、また詳細な地域名が出ることにも危険性があると考えています。

従いまして、今後もその生産者のお米をお申し込みいただいた方にのみ、お電話、またはメールで放射性物質の検出結果をお知らせして、「それでもいい」という方にのみ販売をしたいと思っております。
もちろん、当社ではこの確定結果が出るまで新米を出荷していませんので、すでにお届けしている方に関しては、まったく放射性物質は検出されていませんからご安心ください。

ときに。私はあちこちで「本当にお米から放射性物質が検出されていないのか、政府の発表は信用できない」とか「検査方法はザルなんじゃないか」という声を聞きます。
たしかに政府が発表する数字などには疑問と不満もありますが、皆さまには今回の私たちの発表をこう受け止めていただけると幸いです。
「土壌汚染の影響がある魚沼産でも基本的にゼロ。出ても1ベクレル前後なんだ」
「他の新潟産は安心して食べられるね」と。
新潟だけでなく、山形も、秋田も、長野も、山梨も同様です。
もちろんこれはお米に限った話です。他の農産物も安心とはけっして言えませんが、お米に関しては安心して食べていただきたいと思っています。

最後に。多くの方から「もっと徹底した検査と測定を行ってほしい」というご意見を頂戴します。私たちも「もっと多くの食品を徹底的に調査したい」というのが本心です。
徹底的に調査すれば、皆さまに安心して食べていただくことができますし、それと同時に多くの風評被害を防げます。
しかし現実はそうは簡単にいきません。私たちの使用しているシンチレーション検出器はあくまで簡易測定ですから、「黒」は判断できても、微妙な数値を示す 「グレー」についてはゲルマニウム半導体検出器による本検査にまわさなければいけません。まさに今回のお米のようなパターンです。
この検査には費用がかかります。原因を特定するにはかなりの時間と費用がかかるため、現実的にはゲルマニウム半導体検出器による「徹底した調査」というの は難しいのが現実です。結果、私たちはシンチレーション検出器で「黒」と出たものだけでなく、「グレー」と判断したものも取り扱いを中止せざるをえませ ん。それはつまり、「シロ」かもしれない農産物を扱わないという判断です。
これには多くの異論があることでしょう。私たちも非常に残念です。しかし現状では「疑わしきは食べない」に徹するしかないと思うのです。
とくに個体差の大きな水産品、魚介類には検査の手立てがありません。

私はゲルマニウム半導体検出器による食品検査を、県や国の機関が無料で引き受けられる態勢を築くべきだと思っています。現状では検査機関の数がまったく足 りませんが、そうしなければ本当のことはわかりません。でも徹底的に調査しなければ、どこまでが原発被害で、どこからが風評被害なのかもわかりません。

その態勢が整うまでは、私は福島をはじめ北関東などの土壌汚染が深刻な地域の作付けを凍結するべきだと思っていますし、その間の補償を行うべきだと思います。もちろん魚介類も同様です。

食は人間の根幹です。みんなが安心して、笑顔で食事を楽しめる日がふたたび来ることを私は願っています。

2011年11月1日
株式会社自遊人
代表取締役 岩佐十良

こちらのページで検査結果をご覧いただけます。

Result1_l Result2_l Result3_l

|

« 米屋自遊人、本日の営業時間のお知らせ | トップページ | 西日本の有機・無農薬野菜セット 11月4日発送の野菜 »

013.本日の放射性物質測定結果」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 放射性物質検出のお知らせ:

« 米屋自遊人、本日の営業時間のお知らせ | トップページ | 西日本の有機・無農薬野菜セット 11月4日発送の野菜 »